連載「再エネビジネスの視点で捉える電力業界における最近の注目動向」第9回。2020年度冬の市場価格高騰とその後の供給力不足によって顕在化した課題とは何か。その課題の背景にある小売電気事業者と一般送配電事業者との役割分担の問題とは。再エネ電力事業の最前線で立上げ・運営をリードした小嶋 祐輔氏がひもとく。(バックナンバーはこちら)
ウクライナ情勢の影響をはじめとした燃料価格の高騰や、供給力不足による需給ひっ迫の頻発は、今日の電力システム改革の制度設計にさまざまな課題を残した。ここからは2回にわたり、この課題解決への議論が、今後の電力業界の動向を左右するルール作りに影響を与えるということを念頭に、どういった論点があるのかを整理する。再エネビジネスを展開していく上での参考・理解に繋げてもらいたい。
市場高騰からの2年を経て、課題が顕在化した「供給力の確保」
2020年度の冬の市場高騰とその後の供給力不足によって、顕在化したのは「窯と薪の確保」の問題であった。「窯」というのはハードウエアのことで発電機を指す。電力全面自由化以降、燃料費調達分のコストだけで供給電力を確保する小売電気事業者が増え、発電機の固定費を電気料金に乗せずに価格競争が行われた。