前回はオーストリアで進められている「エネルギー転換(Energiewende)」の話をした。この国の全世帯で最終的に消費されるエネルギーの供給源が2003/04年から2010/11年にかけてどのように変化したかをみると、灯油・LPG・石炭が32.2%から18.6%に減少する一方で、バイオマスは26.4%から35.6%に増加した。太陽熱・ヒートポンプも1.4%から4%に増えている。
かつての「燃料革命」で化石燃料に駆逐された木質燃料は、21世紀とともに始まった「エネルギー転換」で再び表舞台に出てきたのである。オーストリアの場合、その主たる舞台は大きな都市ではなく、農林業の卓越した中山間地だ。農家世帯では今でも薪が広く使われている。近くに樹林地があれば、薪は最も入手しやすい燃料である。薪の市場取引はそれほど一般的ではなく、自家生産か近隣の農家などから購入するケースが多い。