「排出量の算定方法は?」「完全なデータがそろうまで開示できない?」。CO2排出量の算定や情報開示にはどのようなルールがあり、どう対処していけばよいか。取り組む際のポイントについて、数多くの企業課題解決を成功に導いてきたプロレド・パートナーズの環境コンサルティングセクターリーダー石塚 遼氏に道案内してもらう。(連載第11回、バックナンバーはこちら)
今回から、CO2排出量実績のデータ収集および分析についての詳細解説を行う。排出量実績データは開示内容に直結するだけでなく、削減施策の方向性にも大きく影響を及ぼすため、数回に分けて、基本から丁寧に説明することとする。まずは、GHGプロトコルについて見ていこう。
GHGプロトコルとは
CO2排出量を集計する際、「GHGプロトコルのルールでは~」や「GHGプロトコルに準拠している」といったワードをよく見たり聞いたりする。GHGプロトコルは、温室効果ガス(GHG)排出量の算定・報告に関する世界的な基準として2011年10月に策定されたものだ。シンプルに言えば、「温室効果ガスを正確に測定し、どれだけ減らせるかを考えるときに使用する世界標準のルール」である。
以前にも述べたが、このGHGプロトコルにより、算定の対象範囲が定められている。「スコープ(Scope)」という用語を使い、3つの範囲を指定している。「スコープ1」「スコープ2」「スコープ3」に分けられ、端的に言うとスコープ1とスコープ2は自社が直接排出する量、スコープ3は自社の影響を受ける他企業が排出する量を指す。
開示情報は、この世界標準の集計ルールに則った算定であることを前提に閲覧される。したがって、企業にはGHGプロトコルに準拠したCO2排出量の算定が求められる。