【環境ビジネス 編集部員コラム】

カネカ、微生物からプラスチック素材を量産

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微生物が代謝の過程で生成する高分子化合物の工業化に成功。2019年12月から年間5千トン規模の実証プラントで生産を開始し、これまで使い捨てカトラリーなどの製品に応用してきた。2024年には年間2万トン、2030年には同10万〜20万トンへの増産を計画する。

焼却してもCO2ゼロ

カネカが開発した植物油などを原料とし微生物によって生産されるカネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet」に、全世界の注目が集まっている。石油由来プラスチックの代替素材として、EU・米国・日本市場に浸透しつつある。

同社は、化成品・機能性樹脂・食品・医薬品・電子材料・合成繊維など幅広く事業を展開する総合化学メーカー。世界40%のシェアを誇る製品からニッチな産業への強みがある、化学業界のグローバルカンパニーである。

EU、米国で採用が相次ぐ

バイオポリマー生成プラント写真提供:カネカ
バイオポリマー生成プラント(出所:カネカ)

同社が開発し、すでに生産体制に入っているGreen Planetは、微生物が植物由来の油を食べて、体内の酵素によってポリマーにして蓄えたもの。カーボンニュートラル(CN)なバイオ資源を原料としているので、たとえ焼却処分したとしても大気中のCO2濃度を増加させない。

Green Planetは生分解性に加えて、汎用プラスチックと同様の機能を有するため、EUや米国では、すでに多数導入されている。背景に、2019年にEUで発行された「プラスチック指令」によって、2021年からカトラリー、皿、ストローを含む9種類の使い捨てプラスチック製品とオキソ分解性プラスチック製の全製品の市場流通が禁止されたことや、米国を中心にプラスチックごみの埋め立てが大きな社会問題となったことがある。

Green Planetは、次世代プラスチックの画期的な素材として注目されており、食品フィルム包材をはじめストロー、コーヒーカプセル、カトラリーやショッピングバッグ、食品フィルム包装材、手袋など、医療・衛生用品など幅広い分野で導入されている。

たとえば日本でも、セブン‐イレブンのセブンカフェ用ストロー(一部店舗を除く)、伊藤園の紙パック茶系飲料製品のストロー、スターバックスの持ち帰り用カトラリー、さらにJALの国際線機内食の副菜容器などに採用されている。

スターバックスの持ち帰り用カトラリー
スターバックスの持ち帰り用カトラリー
カネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet®」製の食品フィルム包材を、JAL羽田空港ダイヤモンド・プレミアラウンジで提供されるおにぎりの包材に採用。食品の個包装にGreen Planet製フィルムを用いる事例としては世界初となる。
(出所:カネカ)

世界のプラスチックが次世代プラスチックに置き換わる

同社では、2012年、年間生産規模1000トンのプラントの立ち上げを皮切りに、2019年には5000トン、2024年には2万トン規模の出荷を目指し、生産ラインを順次稼働予定している。

2030年には10〜20万トンに生産能力をアップする計画だ。同社の推定では、現技術ですでにGreen Planetで置き換えられる使い捨てプラスチックは全世界で2500万トンに達する。

世界では年々プラスチックの生産・使用量が増加しており、2020年には3億6700万トンのプラスチックが生産された。 2040年までに生産量は2倍になると予想されており、環境汚染の最重要課題となることは必至だ。

さらに土壌中や海中でも微生物によって自然に分解され、最終的にはCO2と水に戻ることで、海洋マイクロプラスチックなど環境汚染も抑制する。

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