これから数回にわたり、需要応答(ディマンド・レスポンス)の先進国であるアメリカの状況を解説します。今回はその第1回目として、需要応答によるピーク電力抑制を国家プロジェクトとして推進するアメリカの全体的な動向と課題についてご紹介します。
「価格型需要応答」と「インセンティブ型需要応答」の2種類
アメリカの多くの地域で、1970年代の石油ショック以降、真夏の午後などの需要ピーク時にユーザが消費電力を抑制すると、代わりに電気料金の一部を払い戻すといった取り組みが行われてきた。しかし、ピーク電力消費抑制手段として需要応答への取り組みを始めたのは、2005年エネルギー政策法が制定されてからです。
ここで言う需要応答 には、「価格型需要応答」(Price-based Demand Response)(時間帯別に供給費用の違いを反映した電気料金を設定すること)と「インセンティブ型需要応答」(Incentive-based Demand Response)(プログラム設置者が需要家と契約を締結し、卸電力料金の高騰時または緊急時に、需要家に対して負荷制御を要請ないし実施する)の2種類があるとされており、日本の大口需要家との需給調整契約や家庭向けにも提供されている時間帯別料金(TOU;Time of Use)といったものも含まれる広範な概念内容となっています。
2005年エネルギー政策法がピーク電力消費抑制手段として需要応答を推進することとしたのは、費用対効果が高いからです。たとえば、調査会社であるGTMリサーチは1メガワットの供給予備力を確保するため必要なコストについて、LNG火力発電の場合は40万ドルかかるのに対して、需要応答の場合はその6割の24ドルと試算しています。
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