6月3日から14日まで、毎年恒例の気候変動交渉の会議がドイツ・ボンで開催された。今回は、2020年以降の国際枠組みとそれまでのコミットメントについて交渉する「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」会合に加え、科学的・技術的な問題について話し合う補助機関会合であるSBSTAと合意の実施に関する補助機関会合のSBIが開催され、私も環境省参与の立場で日本政府交渉団に加わった。
ただ実際には、私の役割は、技術交渉などで首席交渉官を務めるほかは、SBIに立っている4つの議題の議長をするということと、全体の議長たちのアドバイザーや、会議の進め方について事務局にも助言をする不思議なものとなっている。
ただ、その不思議な役割のおかげで、表向きにはあまり知られないことを知れたり、ほとんどの場合、それに関与することが出来たりしている。今回はそのような立場から、今次会合で行ったことについて書いてみたい。
(中略)
今年、ワルシャワで開催されるCOPにおいて決めたいとポーランド政府が臨んでいた案件のほとんどがSBIによる実質的な議論を必要とするものばかりなのだが(例えば、市場メカニズムに関する一連のパッケージ合意、各国の取り組みに関するレビューの方式、適応に関する一連の合意、事務局予算など)、そのどれも公式に交渉されることがなく、実質、ワルシャワでの一本勝負となった。
またSBIは、途上国にとっては、資金や技術、キャパシティービルディングといった支援に関する交渉を行う場であるので、その内容について全く交渉が行われなかったことは大変な痛手だし、その感情や状況が、ADPなどの政治的なプロセスにも悪影響を及ぼしかねないとの懸念もある。 (以上、前回まで)
UNFCCC事務局長であるChristiana Figueres女史が閉会会合で最終日に訴えかけたように、「ワルシャワではSBI偏重型のスケジュールを組む予定だが、今回、全く議論できなかったこともあり、各国の間で非公式に対話を続け、ワルシャワには合意する準備をしてきて欲しい。特に予算やマーケット関連については、喫緊の課題。途上国の行動に関する議論も、来年1月に行われるレビューも、まだ議論されていない。
「この状況を非常に憂慮してきている」というのは決して大げさではない。ビジネスの代表の皆さんが、この状況をご覧になっていみじくもつぶやかれたように、「UNFCCCの場で気候変動問題を論じるのはもう無理ではないか。これこそ終わりの始まりではないか」という分析も頷ける気がする。
では本当に今回のSBIでの混乱は、「終わりの始まり」だったのだろうか?
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