エネルギー供給の主軸を風力と太陽のエネルギーが担うとすれば、バイオマスに残される役割はどのようなものか。これまでバイオマスと言えば、熱と輸送燃料の供給を担い得る、ほとんど唯一の再エネ源のように見られてきた。しかし電気、熱、輸送燃料という三区分は絶対的なものではない。三者の間で結構融通が利くのである。最近のドイツでよく聞かれる「部門間連結(Sektorkopplung)」が正にそれだ。変動電源で生産された電気を使ってヒートポンプを駆動させれば、大気中や地中にある熱を冷暖房用の熱に変換してくれる。また風況に恵まれて大量の余剰電気ができているのなら、水の電気分解で水素を生産することができる。水素は何にでも使える万能のエネルギー媒体と言っていい。
このように考えると、「どうしてもバイオマスでなければ」という局面はかなり限られてくる。『2030年の電力』で取り上げられた12のトレンドの8番目がバイオマスに関わる項目だが、ここではまず次の三つの原則が掲げられている。