2019年3月にドイツ機械工業連盟(VDMA)が主催する結晶シリコン太陽電池に関する技術ロードマップ(International Technology Roadmap for Photovoltaic、ITRPV)の改訂版(第10版)が発行された。ITRPVでは、前版(第9版)と2018年の技術変化を踏まえ、セル高効率化、モジュール高出力化、および市場要請に合致したモジュールの投入を主題として2029年までの今後の10年間の技術変化を見通している。本稿では、今回の改訂版において分析された主要な技術変化見通しを概説する。
ITRPVは、予測のベースとなる2018年末の太陽光発電の状況を以下のように概観している。2018年の世界の太陽電池モジュール出荷量は約109GWで、結晶シリコン太陽電池が95%のシェアを維持している。世界の結晶シリコン太陽電池の生産能力はおよそ150GW/年に達し、稼働率はTier1企業で約80%、Tier2企業が約50%である。2018年末時点での太陽電池モジュール価格は24.4米セント/W(以下、セントと記載)と、2017年末の35.4セント/Wから大幅に低下した。2018年には原料からウエハー工程までのコストが大幅に低下し、モジュール製造コストの内訳は、原料工程14%、ウエハー工程14%、セル化工程26%、モジュール化工程46%である。なお、1976年からの太陽電池モジュール価格の習熟率は若干増加して23.2%になっており、2018年に価格がさらに低下したことが示された。