800隻に及ぶ多様な船を運航する世界有数の総合海運企業、商船三井。グループ経営計画「BLUE ACTION 2035」において、環境戦略を主要戦略とし、「2050年までのネットゼロ・エミッション」「人・社会・地球のサステナブルな発展」の実現のための取り組みを進める。脱炭素事業の一つである、風と水素を活用したゼロエミッション事業「ウインドハンター」について、概要や進捗、目指す未来を聞いた。
海運の脱炭素化をけん引
企業としての成長と持続可能な社会を両立させるためのサステナブルアクションを進める商船三井。2023年末には海運業として初となるブルーボンドの発行を決定した。同社は、2023年度からの3年間で計6500億円の環境投資を行う。
エネルギーシフトや環境負荷低減へ向けては、2021年6月に発表した「商船三井グループ 環境ビジョン2.1」を改訂し、2023年4月に「商船三井グループ環境ビジョン2.2」を公表している。同ビジョンでは、2050年までにグループ全体でのネットゼロを目指し、中長期目標として、「2020年代中のネットゼロ・エミッション外航船の運航開始」「2035年までに輸送におけるGHG排出原単位の45%削減(2019年比)」を掲げる。
こうした目標を達成するべく、同社は、LNG燃料の使用や洋上風力発電、マングローブの再生・保全などの事業を推進している。
最新技術で現代に帆船を蘇らせる
中でも、脱炭素事業として期待が集まるのが、「ウインドハンター」プロジェクトだ。その前身として、同社は最新技術で現代に帆船を蘇らせ、風を船の推進力に活用する「ウインドチャレンジャー」プロジェクトを進めてきた。
かつて海運の主流だった帆船は、風がなければ動けず、定時運航の難しさやコスト面の課題から、化石燃料を燃料源とするエンジン船に置き換わってきた。しかし今、カーボンニュートラルに向けた動きが世界で活発化する中、再度注目を浴びている。
「無尽蔵にあるクリーンエネルギーである風にもう一度着目し、現代に帆船を蘇らせる試みがウインドチャレンジャーです」と、同社技術研究所所長の島 健太郎氏。
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