BYD、系統用蓄電池ビジネスに注力、安全性を重視した製品を提供

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世界有数の電気自動車・蓄電池メーカーとして知られるBYD。世界では、蓄電池システムの導入量で第4位のシェアを獲得している。2023年から子会社のBYD Autoが日本でEVの販売を本格化したことでも話題になった。グローバル営業部門の責任者である郭彬氏に、日本における今後の蓄電池マーケットの展望について聞いた。

日本の蓄電池マーケットは有望な市場の1つ

「Build Your Dreams」の頭文字をとったBYD(比亜迪)は、1995年に中国・深圳で蓄電池メーカーとして創業した。電気自動車・新エネルギー・ITエレクトロニクス・モノレールの各事業を世界で展開している。新エネルギー事業では、23ヶ国以上に納入実績があり、世界シェアは第4位だ。また、電気自動車メーカーとしても知られる。 

同社は、世界で累計31.5GWhの蓄電池の出荷実績がある。グローバル営業部門の責任者である郭氏は、日本の蓄電池マーケットについて「有望な市場だと捉えています。2050年カーボンニュートラルに向けて、次々に政策が動き出している中で参入するには規制などのハードルもありますが、チャンスがあると考えています。日本では特に、系統用蓄電池事業に力を入れていきます」と話す。

現在、同社の生産キャパシティの約8割が系統用蓄電池だという。系統用蓄電池事業は、欧州や米国などで先行しているが、近年、日本国内でも急速に関心が高まっている。経済産業省の補助制度や長期脱炭素電源オークションの開始などもあって、系統用蓄電池への参入する事業者も目立つ。

系統用蓄電池メーカーには、国内外問わずさまざまなメーカーがあるが、同社は今後、日本でどのように事業を進めていくのか。「系統用蓄電池のマーケットは制度などの変化が激しい。放電時間を何時間に設定するかなど、国の市場設計に合わせた製品ラインナップが重要です。日本では、3〜4時間放電タイプが主流になるでしょう。こうした製品展開を見極めるため、詳細なマーケット調査を行っています」と郭氏。

蓄電池メーカーとして高い安全性を追求

蓄電池メーカーとして創業した同社はこれまで、小型の電子機器や電気自動車など、さまざまな蓄電池の製造をしてきた。蓄電池の最小単位であるセルやモジュールの製造を含む、一貫した体制によってコストダウンを実現している。

郭氏は、コストダウンに加えて、系統用蓄電池事業では安全性の追求が最重要だと強調する。「系統用蓄電池のコンテナ1つには、電気自動車約50台分に相当する蓄電池が搭載されることがあります。規模の大きい系統用蓄電池事業では、エネルギー密度が高くなるため、特に安全性を重視する必要があるのです」。 

「蓄電池の製造に関しては、28年間のノウハウを蓄積しています。蓄電池の製造ラインには、当社オリジナルのプロセスも多いです。これまで積み上げてきた経験によって、高い安全性を実現します」と郭氏は力を込める。

昨年対比1.5倍の売上目標を設定

電力供給の安定化や再生可能エネルギーの有効活用に役立つ系統用蓄電池は、世界で導入が加速している。「2023年の蓄電池システムの世界全体での売上額は300億人民元でした。今年はその売上額をベースとして、1.5倍である450億人民元という目標を掲げています」と郭氏は語る。

日本のマーケットでの売上については、「2023年はパンデミック後の市場の活性化などを受けて、100MWhの蓄電池システムを出荷しました。シェアにすると約18%です。今年はさらに出荷量が伸びると確信しています」と郭氏は強調する。

世界の営業部門を束ねる郭氏は、2004年の入社以来、車載用の蓄電池パックの開発や、米国におけるマーケット調査などの業務を経て現職に就いた。「日本のマーケットはまだまだこれから発展するでしょう。出力が変動する太陽光発電や風力発電を多く導入するには、電力を安定供給するために蓄電池が必要です。制度改正によって、蓄電池を活用できる市場も本格化しました。培ってきた技術力で安全性の高い蓄電池システムを提供していきたい」と展望する。

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