メタバース事業9割超が事業化に失敗、原因を特定 クニエ

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(出所:クニエ)
(出所:クニエ)

NTTグループでコンサルティングサービスを展開するクニエ(東京都千代田区)は5月23日、メタバースの事業化検討に関わった経験のあるビジネスパーソンを対象に調査した、メタバース関連事業の実態レポートを公開した。メタバース事業の9割以上が事業化に失敗しているという結果になった。

調査は、メタバース関連事業の状況の把握と、事業化の成功・失敗要因の抽出を目的とし1月にインターネット上で3日間行われた。メタバース・ビジネスの検討に携わった経験者を対象としており、スクリーニング調査に7万人、本調査に500人が回答した。

メタバース関連事業、成功は8.1% 失敗の原因13を特定

同調査では、メタバース・ビジネスの取り組み状況に関して「事業化の社内審査がおりた」「事業として既に運営している」との回答は成功、「事業化に向けた検討が停滞している」「検討自体が中止された」との回答は失敗と定義した。その結果、成功は8.1%、失敗は91.9%だったという。

スクリーニング調査対象者7万人のうち、事業化に向けたメタバースビジネスの検討に携わった経験者かつ事業化の成否が判明している回答者(1,803人)で分析(出所:クニエ)
スクリーニング調査対象者7万人のうち、事業化に向けたメタバースビジネスの検討に携わった経験者かつ事業化の成否が判明している回答者(1,803人)で分析(出所:クニエ)

同レポートでは失敗と成功の事例を比較し、①企画内容・ビジネスモデル、②検討プロセス、③組織・体制の3つの観点から、事業化に失敗するメタバース関連事業の特徴を13種類特定した。

例えば、①では、既存ビジネスの延長線上の位置付けていることやメタバースである合理性がないこと、②ではターゲットや課題・ニーズの明確化や、リスクの分析、撤退条件の設定の不十分さ、③では専門性を持つ人材の不足や、社内外の支援が得られないことなどを挙げている。

メタバースに取り組む意義を明確にし、ニーズ起点で検討することが必要

同社は、調査結果と同社のコンサルティング実績から、以下の4つの提言を発表している。

  • メタバースに取り組む意義を明確にし、不明確なら撤退を検討すること
  • ユースケース起点ではなく、顧客の課題・ニーズ起点で検討すること
  • メタバースを取り巻く環境の変化に備え、レジリエンスを高めること
  • 検討チームを新たに組成し、新規事業の専門性を持つ人材を投入すること

同社は調査レポートの公表に先駆け、メタバースを用いたビジネスを検討する企業向けに「メタバース事業化診断サービス」を2月より提供。構想から導入・展開、提供開始後の改善まで伴走し、企業のメタバースビジネス参入の成功に寄与していくとしている。

メタバース関連事業は今後緩やかに増加

同社は、日本国内において、メタバース関連事業に取り組む企業が増えている一方で、現時点で事業化までたどり着いた企業は少なく、多くの企業が事業化に失敗している現状を説明。

しかし、自社の事業と掛け合わせたメタバース関連事業の実現を模索している企業も一定数存在していることから、同社はメタバースは今後、一時的に熱狂が冷めて「幻滅期」を迎えながらも、メタバース関連事業を展開する企業は緩やかに増加していくとの見解を示した。

同社は、今後も調査レポートで得られた結果や、これまでのコンサルティングで得た知見・ノウハウを生かし、企業のメタバース関連事業の取り組みを支援していくという。

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