立ち上げから2年でトークン上場のSUP その秘訣とは

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(出所:SAKURA UNITED PLATFORM)
(出所:SAKURA UNITED PLATFORM)

web3コミュニティ・プラットフォームの運営事業を行うSAKURA UNITED PLATFORM(SUP)は、2023年3月に同社コミュニティ内でユーザーが利用できる独自トークン(暗号資産)「SUPトークン」の発行を発表。8月25日に東南アジア最大の取引所MEXCに上場した。他業界からweb3業界へ参入し、驚くべきスピードでトークン上場に至った同社の戦略や今後の可能性について、話を聞いた。

人材会社がギルド運営で社会課題を解決する

2021年11月、シンガポールを拠点に、「世界に人々の笑顔を咲かせる」のビジョンのもと、web3によって拓かれる新たなコミュニティや経済圏を支える「コミュニティ・プラットフォーム」の構築を目指して発足したSUP。

東南アジアの貧困と雇用問題の解決を目指し、GameFiコミュニティを支えるブロックチェーンゲームギルド「SAKURA GUILD GAMES」の運営を開始。現在、約25万人のコミュニティを運営している。

設立の経緯については、「Digital Entertainment Asset(DEA)というGameFi領域のシンガポール法人が、スカラーシップ制度(ゲームのプレイに必要なNFTの貸出制度)をゲームに導入したい、そのためにはギルドという役割が必要だということで、2021年の夏頃に我々にご相談いただきました。我々はもともと人材事業をやっていた会社ですので、そもそもGameFi、ギルドって何だろうというところから始まり、急ピッチで準備を始めました。トークンの価値の上げ下げやゲームの性質などには不確定な要素が多くありましたが、ゲーム会社と正式にタッグを組めるということで、その辺りがクリアになり、スタートしたというのが経緯です」と同社共同代表取締役(Co-CEO)の大川隼氏。

当時、税制などの問題から日本で運営していくことは難しいと考え、その後シンガポールで法人を立ち上げた。スタートから数カ月での立ち上げには、web3業界のスピード感が伺える。

「ギルド事業は、多くの方々に関わってもらい、世界の貧困問題解決に貢献することを目指しています。世界に人々の笑顔の花を咲かせる、ということをビジョンにおいて、法人名のSAKURA(さくら)という言葉には、日本クオリティを世界に発信するという思いを込めています」

貧困によって銀行口座を持つことができない人でも、暗号資産を入れるウォレットは作ることができる。ゲームをプレイすることによって暗号資産が手に入る仕組みを提供し、副業のように収入を得てもらうことで、収入格差を減らし、貧困問題の解決を目指すという。

そして同社は2023年3月に独自トークン「SUPトークン」を発行することを発表。8月25日に東南アジア最大級の取引所MEXCに上場した。

トークンの上場とは、トークンが取引所で取り扱いを開始されることを指す。同社は上場によって、より広い市場での活動を展開し、貧困と雇用問題の解決を目指す理念の実現を加速させる考えだ。

スピード感の秘訣はパートナーとの連携

他業界から数カ月で法人を設立しweb3業界に参入、さらにそこから1年足らずでトークン上場。設立当初は約5千人だったコミュニティメンバーも、今では世界中で約25万人の規模となっている。

(出所:SAKURA UNITED PLATFORM)
(出所:SAKURA UNITED PLATFORM)

web3業界は現在法律や税制の部分で事業環境が形作られている最中であり、ルールや環境、求められるものが目まぐるしく変化するビジネス分野となっている。その中でも驚くべきスピードで成長を続けている同社の秘訣は「パートナーとの連携にある」という。

「スピード感に関しては、『遅れまい』と危機感を持ってやってきました。その中で、ゲーム会社はもちろん、YouTube事務所やメディアとの提携など、さまざまな企業と連携しながら進めています。業界に新しく飛び込んだ我々ができる範囲は限られているので、『餅は餅屋』という考えを大事にしています。各領域に特化した企業には勝てませんから、タッグを組んだほうが、一緒に早くスケールアップできるはずです。我々はもともと人材会社で人材に関しては強みがありますので、他社様と不足している部分を補い合えればと思っています」

web3業界は「競争」ではなく「共創」が活発な業界だと言われる。ブロックチェーンやDAO(分散型台帳)といったweb3の技術や思想は、「分散型」という思想が前提にあり、この「分散」という考え方が、それぞれの役割を果たすという、「共創」の形につながっているのではないかと大川氏は考察している。

「我々は人材のマネージメントを得意としているので、例えば、まだブロックチェーン参入されてない業界に対してGameFiのスパイスを加えることによって、各業界ごとの課題解決に繋がるのであれば、業界各社とタッグを組んでいきたいと思います。現時点では旅行業界や、環境に取り組むような業界、飲食業界などを想定しています」

同社は現在、Hashportなどのweb3企業や、国内大手企業など、多様な業界と連携を組んでおり、今後もその輪を広げていく予定だという。

(出所:SAKURA UNITED PLATFORM)
(出所:SAKURA UNITED PLATFORM)

web3マスアダプションには「橋渡し」が必要

GameFi領域で社会課題の解決を目指す同社。大川氏に、今後のweb3業界の可能性を聞いた。

「この業界に入って、世界との境界線がないということを感じています。地域問わず世界中の方とお話する機会があり、グローバルに挑戦できる環境があると思います。今後日系企業やプロジェクトがもっと増えてほしい、そこに我々としては礎の役割を担えればと思っています」

また、web3の技術や思想の普及が加速し、「web3」という言葉が特別ではなくなる、いわゆる「マスアダプション」には今後どういったことが必要か。

GameFi領域では、大手ゲーム会社が数多く名乗りを上げているものの、既存のタイトルは少ないという。大川氏は「誰もが知っているゲームタイトルがGameFi領域に参入してくるとマスアダプションに近づくはずです。既に多くのユーザーを持つゲームが入ってくることで、それが橋渡しとなって、これまでweb3に関わってこなかった人が興味を持つきっかけになるのではと思います。そういった意味で、我々web3業界、GameFi領域参入のお手伝いで貢献していきたいと思います」と、橋渡しが重要だと説明する。

日本から世界へ

「GameFi領域で培ってきた要素を、リアルな経済活動の中にはめ込み、各業界とタッグを組みながら、プロジェクトを立ち上げていきたいと考えています。我々だけでは限界がありますので、ある程度仕組みが横展開できるようになれば、プラットフォームを開放し、いろんな企業がチャレンジする基盤にしていきたいと思います」

ブロックチェーンエンジニアがいないと、自社でブロックチェーン事業を行うのは困難だ。しかし同社がプラットフォームを提供することで、エンジニアがいない企業でも、web3領域にスピーディーにチャレンジすることができるようになるという。

「スタートアップ、上場企業などどんな会社にとっても良い環境を作れたらいいと思っています。我々のノウハウを生かした環境を提供して、我々もプレーヤーでありながら、このプラットフォームの中で、ご一緒できる環境を作っていきたい」と大川氏は話す。

現在、日本はweb3に対して政府が後押しし、税制や法の改正が行われるなど、世界から注目が集まっている。

大川氏は、「日本もグローバルに活躍できる場所になりつつありますので、そんな日本から世界に価値を展開していきたいと思います」と展望を語った。

大川隼氏
大川隼氏
SAKURA UNITED PLATFORM
共同代表取締役(Co-CEO)

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