NFTでCO2削減を自分ごと化 脱炭素に向け行動変容促す

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CO2削減プロジェクトを応援して自分だけのHOSHIを育てるcapture.x(出所:bajji)
CO2削減プロジェクトを応援して自分だけのHOSHIを育てるcapture.x(出所:bajji)

2023年3月、脱炭素社会の早期実現を目指すサービス、環境貢献型NFT「capture.x」をリリースしたbajji。テクノロジーの力を活用し、CO2排出量の削減という「人類共通の課題」の解決に向けた一歩を踏み出す。「capture.x」開発の背景やサービス設計について、ファウンダー代表取締役CEOの小林慎和氏に聞いた。

テクノロジーを活用し脱炭素へ向けたソリューションを

「テクノロジーの力で世の中を1mmでも良くする」をパーパスに、2019年に設立したbajji(バッジ)。2023年3月にリリースした「capture.x」は、CO2の回収を大きなターゲットとしたweb3気候テックサービス。脱炭素関連プロジェクトを応援し、消費者とつなげることで脱炭素社会の早期実現を目指す。

2015年のCOP21で合意されたパリ協定では、「世界の平均気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑える」という目標が掲げられた。2021年のCOP26では、2050年までにCO2を80%削減し、さらにネットゼロを目指していくことが「人類共通の課題」となった。「1共演を超える規模の世界経済が脱炭素へ動き始めています。脱炭素へ向けたソリューションの開発には、地球に生きる人間として、大きなやりがいを感じます」と代表の小林氏。

現在、世界で年間約400億トンのCO2が排出されている。カーボンニュートラルを実現していくためには、CO2の排出量を減らすと同時に、回収量を現在の数百倍にまで増やしていくことが求められている。「当社は環境の専門家ではありませんが、アプリ屋として、テクノロジーを活用して何かできないかと考えた結果生まれたのが『capture.x』です」

脱炭素を〈自分ごと〉化

「capture.x」の一番のポイントはCO2の見える化。「2050年までにCO2を8割減らし、さらにネットゼロを目指していくと言っても、目に見えないCO2を減らすというのは、体重計に乗らずにダイエットをするようなもの。見たことのない数字を減らそうとしても、身近に感じづらく、行動は難しいでしょう」

「capture.x」は、CO2回収設備やメガソーラー設備など、脱炭素社会に向けた設備のNFT(非代替性トークン)マーケットプレイス。CO2削減に取り組む施設やプロジェクトをNFT化し、NFTを購入したユーザーは対象施設・設備・プロジェクトの「デジタルオーナー」となる。対象施設やそこに紐づくCO2削減量について権限を持つわけではないが、施設の画面で〈エール(応援)〉を送ることで、日々のCO2削減データをリアルタイムで確認でき、〈エールポイント〉を獲得できる。ポイントの使途は、現在は「capture.x」内でのNFT購入に限られるが、将来的には他社発行のポイントとの交換やQRコード決済との連携により、日常の決済でも使えるようにする計画だ。

対象施設の画面で〈エール〉を送ると、日々のCO2削減データをリアルタイムで確認できる(出所:bajji)
対象施設の画面で〈エール〉を送ると、日々のCO2削減データをリアルタイムで確認できる(出所:bajji)

「オーナーになると、自分の〈HOSHI〉に購入した設備が設置され、設備やプロジェクトが増えるほど、自分のHOSHIが育っていきます。エネルギーを媒介にオーナーとなることで、施設や設備のCO2の値が自分ごとになればと思います」

一方で企業にとっては、なかなか消費者に届かないCO2削減への取り組みを、広く知ってもらうための機会となる。〈エール〉の回数はCO2削減量を目にした消費者の数と一致するので、PR効果を正確に把握できる。さらに〈エール〉によって、自社の環境貢献活動を多くの消費者から応援されることで、環境対策への意識がより高まる。

「『capture.x』のパーパスは、『CO2削減の実現に向けた、ユーザーと企業の行動変容』です。CO2削減に関わる数字を毎日目にすることで、CO2削減を〈自分ごと〉化する人が増えることが、行動変容の第一歩かと考えています」

JERAの太陽光発電所に1万回のエール

「capture.x」の販売サイト開設第一弾として、JERAが三重県多気町で運営する太陽光発電所のデジタルオーナー権付きNFTを販売。2023年3月の公開後、第一次販売分は即日完売した。JERAは再生可能エネルギーとゼロエミッション火力により、2050年のCO2排出ゼロを目指しており、2022年夏に行った「capture.x」のコンセプト発表の後、4カ月の早さで業務提携が決まった。

JERAが多気町で運営する太陽光発電所のNFT(出所:bajji)
JERAが多気町で運営する太陽光発電所のNFT(出所:bajji)

NFT販売後、同施設へ送られたエールは2023年5月の時点で既に1万回を超えた。つまり、脱炭素社会へ向けた1万回の行動変容を促したと同時に、それだけのユーザーがJERAの環境への活動を認知し、応援したことになる。

また、国内最大のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクは、多気町と連携し、多気町のふるさとチョイス限定の返礼品として、町の太陽光発電所のデジタルオーナー権を付与する「環境貢献型NFT」を掲載。地域の環境貢献の取り組みに関連したNFTを返礼品として提供するのは、全国初の取り組みだという。

5月にはJERAの第2弾として茨城県小美玉市、第3弾として栃木県矢板市の太陽光発電所のNFT化を発表した。その後6月には初期費用無料で太陽光発電を設置して電気代をお得にするサービス「シェアでんき」を提供するシェアリングエネルギーとの協業を発表。行動変容の輪を続々と広げている。

脱炭素社会の実現を早めるサービスに

「capture.x」ではNFTの売上の一部を寄付金として、CO2を削減する企業、プロジェクト、設備に活用する。「capture.x」で消費者がNFTを購入すればするほど、寄付を通じてリアル世界でのCO2削減に寄与することも可能となる。

今後はクラウドファンディング×「capture.x」で、足りていない設備の建設に対する、先行デジタルオーナー権の販売も視野に入れる。さらに、次世代未来都市開発におけるプロセスを、「capture.x」でNFTにして、見える化していくことにも挑戦していく。

同社は、今後もさまざまな企業、自治体の施設のNFT化を目指す。「いずれは47都道府県すべてにNFTがあるようにしたい」と小林氏。「『caputure.X』を『これがあったからカーボンニュートラルが5年10年早まった』と言われるサービスに育てていくことが目標です。また、デジタルに国境はないので、将来的には国際間のユーザーも増えていけばと思います」と展望を語った。

小林 慎和氏 株式会社bajji ファウンダー代表取締役/博士(工学)
小林 慎和氏 株式会社bajji ファウンダー代表取締役/博士(工学)

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