
リーフが切り拓いたEVの歴史と変化する市場環境
時計の針を少し戻すと、初代が登場した頃「EVは極めて特殊なクルマ」だった。EVはその時点で、100年近い歴史があったものの、EVを製造する企業はどこも規模が小さかった。1990年には米カリフォルニア州の環境施策としてZEV法(ゼロエミッションビークル規制法)が施行され、大手メーカーが実験的に市場参入するも販売台数は限定的、かつ事業性を見出だせず皆が撤退に追い込まれた。
そうしたEVの常識を覆し、大手メーカーが事実上、初めて大量生産を実現したリーフは、まさにエポックメイキングであった。
だが、日産が当初計画したほどグローバルEV市場は拡大せず、リーフを軸とした多様なEV事業展開には至らず。第2世代が登場した2018年になると、EV市場ではテスラが躍進。背景にあったのは、ESG投資とブランド戦略だ。
COP21のパリ協定により、世界がSDGsへの関心が高まる中、従来のような財務情報だけではなく環境・ソーシャル・ガバナンスを重要視するESG投資が一気に広がり、テスラに対する直接的な投資に追い風となった。株価が上昇したテスラはEVのみならず、幅広い環境関連事業へ巨額の投資を行うことで、大手自動車メーカーとの事業の差別化を急いだ。
また、中国政府は2000年代から続けてきた環境車に対する施策をさらに強化し、EV実用化を強力に推し進め、欧州では欧州グリーンディール政策によってドイツメーカーを筆頭にEVシフトを一気に展開。このような時代変化の中で、第2世代リーフは初代のようなエポックメイキングな存在ではなく、日産はリーフに主要ラインナップのひとつとして安定的な成長を目指した。
そして今回、第3世代となったリーフが置かれた社会環境は、「EVの踊り場」、「中国地場メーカーによる激しい価格競争」、「トランプ関税」、そして日産の企業としての抜本的な事業転換期という難しい局面にある。
第3世代で飛躍した技術進化とプラットフォーム戦略
技術的な視点で第3世代リーフを見ると、第2世代とは大きく違う。
ひとクラス上のEV「アリア」とプラットフォームを共有化し、リアサスペンションがマルチリンク式となったことで乗り心地やハンドリングが大幅に向上している。モーター・インバーター・減速機を一体化したe-アクスルでは、2025年中に公開予定の大型ミニバン新型「エルグランド」等で採用する第3世代e-POWERを搭載。電池はアリアとは違うメーカーの新世代型を採用した。

さらに、カーナビと連動して、システムがリーフの走行予定ルートの負荷が低いと判断すると、バッテリーの温度管理モードを自動転換したり、急速充電での受入温度を調整することで、充電効率が第2世代と比べて大幅に向上している。出力150kWの急速充電で、SOC10〜80%、バッテリー温度25度の状態では15分間で約250km走行できる。価格は、アリアと「サクラ」の中間という車格が変わらないことから、400〜500万円ていどが予想される。
