「統合はあくまでも協議段階」
台湾企業による買収話やら、国による関与やら、経営統合に関するリーク記事が乱立し、その結果として3社の株価が乱高下した。そうした中、やっと3社の社長が正式コメントする場が設けられたのだが、あくまでも現時点では経営統合に向けた可能性を協議する段階であることを、それぞれが主張するにとどまった。
特に、経営統合の中心となるホンダの三部敏宏社長は、経営統合が「上梓しない可能性はゼロでない」と予防線を張った。
その上で、経営統合した場合に考えられるシナジー効果については、研究開発、生産体制、購買機能、サプライチェーンなど広い分野を挙げた。今後については、2025年6月予定とする経営統合に向けた最終契約書の提携までに、日産がいう「ターンアラウンド」を実行できるかによって、ホンダの経営統合に対する受け止めかたが変わることになるだろう。
このターンアラウンドとは、まさにリストラクチャリング(事業の再構築)である。
技術のカギを握るハイブリッド車、ホンダと日産
技術面で見れば、喫緊の課題である北米市場でのハイブリッド車をどのように拡充するかだ。現行のe-POWERは、技術的にはエンジンを発電機としてのみ使うシリーズハイブリッド車であり、エンジン駆動とモーターを介した駆動を振り分けるシリーズパレラルハイブリッドの導入が求められるところだ。
その観点では、ホンダのe:HEV(イー・エイチイーブイ)を日産向けに供給する方法が時間的な制約から考えると、ベターな選択肢に思える。ホンダは12月中旬、筆者を含む報道陣向けに新開発のエンジンやバッテリーパックを搭載した、小型と中型の次世代e:HEVシステムを公開している。
こうした次世代システムの導入には、日産として早くとも2年近くはかかることが想像出来るため、例えば、現行e:HEVを搭載したホンダ車の相互補完によって日産モデルを仕立てる”中継ぎ”も考えられるだろう。
注目の次世代EV、SDVと車載OS
さらに、ホンダの次世代EV「ゼロシリーズ」と、日産EVシステムをどのように融合するのかが、サプライヤーはもとより、販売店やユーザーも大いに気になるところだ。
ホンダと日産は、3月に電動化と知能化の領域において戦略的パートナーシップに関する検討を始めており、さらに8月からは具体的な案件としてSDVでの協業について具体的な協議に入っていた。SDVとは、ソフトウェア・デファインド・ビークル。ソフトウェアによって、クルマそのものだけではなく、クルマを介したエネルギーマネージメントやデータマネージメントにおける新しいサービスが一気に広がる可能性がある。
そこで注目されるのが、車載OS(オペレーティング・システム)だ。
ホンダと日産、それぞれがSDVや車載OSの研究開発を進めてきたわけだが、経営統合による研究開発分野の統合によって、車載OSについても、三菱を含めて統合される可能性は十分高いと思われる。
見方を変えれば、自動車メーカーの次世代事業化において、最重要課題のひとつであるSDVや車載OSにおける独自性を失うという選択を、日産が決断するのかが注目されるところだ。
その他、雇用や労務、そして販売網など、ホンダ・日産・三菱の経営統合に向けては高いハードルが数多く存在している状況だ。はたして、この経営統合は上梓するのだろうか。今度の動向をしっかりとフォローしていきたい。
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