ここへきて、物流ビジネスの次世代化が加速している。
いわゆる、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)という観点で、各種の最先端技術を導入する物流事業者が増えているのだ。
時代を少しだけ振り返ると、輸送機器という大きな括りでDXやGXを見れば、乗用車では2010年代はじめに、日産「リーフ」と三菱自動車工業「i-MiEV」が大手自動車メーカーとして初めて大量生産するEV(電気自動車)として登場したことで、EVが次世代車技術の筆頭に躍り出た。
その際、小口配送やタクシーなどの事業車両についてもEV化が進む兆しがあったが、事業者としてはコストメリットを十分に認識できなかったことで、本格的な普及には結びつかなかった。
2010年代半ばになると、ドイツのダイムラー(メルセデス・ベンツ)が用いたマーケティング用語のCASE(ケース)に対して、乗用車のみならず物流関連領域からも注目が集まるようになった。
CASEとは、通信によるコネクテッド、自動運転、シェアリングなどの新領域サービス、そして電動化という大きく4つの分野が相乗効果を示すという考え方だ。
だが、それでも物流領域では、CASEに対する初期投資とランニングコスト(維持費)を総括したうえでのコストメリットが得られる事例は限定的という判断をする企業や事業者が主流だった。
ところが、2010年代後半に一気に風向きが変わる。欧州を起点にグローバルで拡大したESG投資が日本市場にも直接的な影響を及ぼすようになったのだ。
ESG投資とは、従来の財務情報だけではなく、環境、ソーシャル(社会性)、ガバナンス(企業統治)の視点を重視する投資であり、SDGs(国連の持続可能な開発目標)との関係性も深い。
物流関連の企業経営者としては、ESG投資を十分に考慮した事業計画の設定が必須となってきており、DXやGXという言葉で表現されるような最新技術を積極的に取り込もうという動きが出てきたといえるだろう。
ただし最近の物流業界の動きを見ると、やや『話題先行』という風潮があるように感じられる。経営層のみならず物流業界に従事する多くの人たちが、「人や地域のために、これから持続的に何が本当に必要なのか?」というそもそも論に対する議論が不足している印象がある。
せっかく、議論のためのツールが揃ってきているのだから、物流業界は今一度、原点に立ち返って未来について本気で語り合う姿勢と、そうした場が必要だと思う。